ヤマハYDS1浅間型レーサー
実車について:
アサマ・タンクで有名なヤマハYDS浅間型レーサーは
前年、伊藤史朗がアメリカで乗ったカタリナYD−Bレーサーのレプリカとして
1959年発売されたヤマハスポーツ250S(後にYDS1に改名)用のレースキットとして発売されたものです。
(車輌価格18万5千円 レースキット価格5万5千670円)
同年ホンダがCB92/95を発売したのも、共に浅間レースを照準に当てたものです。
ドイツのアドラー・ワークスレーサーを手本に
ヤマハ独自の改良を加えて作られた空冷2サイクル2気筒250ccは、国産市販車初の前進5段ギアを採用
18馬力を7800回転で搾り出しました。
その年の8月に行われた有名な第3回浅間火山レースでは、ホンダが圧倒的な早さの4気筒RC160を大挙出場させたのに対し、
ヤマハは野口種晴が、市販まもないこの250S「改」浅間レーサーで出場。
マシン・トラブルでリタイヤしたものの、一時は2位を快走するなど、その高性能な走りっぷりに大いに人気が高まりました。
1960年第3回クラブマンレース宇都宮まで、このYDS1クラブマンは活躍し、
その後は1962年発表されたYDS2ベースの市販レーサーTD1Aに、その後任を託します。
元々がレース・キットとして発売されたこの浅間仕様YDS1は
ベース車輌が1959年〜62年まで3年以上作られたことや、後年にキットを組み込んだものなど、
種類や程度の様々な個体を見ることができます。
グンゼ(クレオス)のこのYDS1クラブマンは
フロート別体キャブ付という珍しい個体、もしくはセミワークス仕様をモデル化したものと思われます。

Kimshouse Garage Owner

製作の感想:
今までのように時間をかけて作る模型と
短期間で仕上るのものと、それほど違いがあるものなのか疑問であったため
このYDS1はさっさと作り上げることを心掛けましたが、結局2ヶ月もかけてしまいました。
途中、ウイングローブの写真集に刺激を受けたこともあり
最終的には、いかにも可動しそうに見える質感を追求することに重点をおきました。
ペダル類へのこだわり、特にキックペダル、右サイドのブレーキはかなりよいな、と自画自賛しています。
また、リアサスも外側を六角ボルトで、内側は真鍮パイプで留めてあります。
バネを付ければすべて可動すると思いますが、いかにも動きそうな雰囲気を出せるとよいと思って実車の作りでやっています。
ハンドル廻りは、乗って握ってみたくなるような雰囲気を出そうとしました。
エキパイの形状を相当変更したのは、全体のバランスにもいい影響を与えたように思われます。
ハブを改良したのも効いています。

ペダル類、ボルト関係に相当凝り、その上で新車の輝きも少しは求めてみようとしたのが今回の作品です。
まとめると、今回の製作ポイントは、
(1)綺麗に仕上る、(2)全体のプロポーションを修正する、(3)可動部分に拘る、ということでした。
その点は自分で相当満足しています。
以前は、Sugita流というものを実感していませんでしたが、今回なんとなく自分の作り方がわかり始めたように思います。
迫力はあまりありませんが「飾り気なく、でも美しく」という方向性です。
オーナー作品のエンジンの音が聞こえてきそうな実感ある模型ではなく
レストアしてまだエンジンを一度もかけたことのない状態、という雰囲気でしょうか。


YDS1 in Progress
反省:
メッキ部分の処理として吹いたスモークがフェンダーには濃すぎたようで、写真ではちょっと黒く見えます。
リムぐらいが丁度でしょうか?
膝当ては最初、スポンジを表現しようと、いろいろ塗装の手段を試み、
結局、他とのバランスを考えてエアブラシで吹きましたが、マスキングが上手くいかずに
黒のエッジに黄色がはみ出てしまったのは失敗です。
リムも中央の隆起にスモークが濃くでてしまっていて合わせ目が酷いように見えてしまうのが少々残念です。
全体的にこんなディティールに拘ったのですから
リムも手抜きをせずに丁寧にアルミ箔を張ることに挑戦すればよかったと思いました。
実車でもリムの中央が隆起しているとはいえ、
その状態を利用して合わせ目をごまかせるまでの力量はなかったようです。


キットについて:
このYDS1クラブマンレーサーも、この7月に再販されるのだそうです。
昨年、メグロを作り始めましたら再販されましたし… 
CR110も完成させた後に再販されました。
不思議な縁(?)を感じるグンゼのキット達です。

グンゼは3作目ですので、特にありませんが
ここのところ毎年2台づつ再販されているのは嬉しいことです。
折角ですからホワイトメタルの質を変えてくれると更に有難いですね。
もっと欲を言えば、リムもメタルにして欲しいものです。
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